プラン集の功罪
朝起きるとカーテンの隙間から朝日のラインが壁を照らしている。小鳥たちの鳴き声。少し肌寒くなってきて、それが気持ちいいなぁと思う。建物の中に居ても自然を感じることが出来る。むしろ、身を守ってくれる建物があるからこそ、自然の有難みを感じることが出来る。
そう思う。
「年間100棟建てる」
とか
「創業2年で20棟」
という当時の若かりし私にとって魅力的なキャッチコピーに惑わされて、建築関係のフランチャイズに問い合わせをしました。そうするとプラン集というものが出てきました。
このプラン集というのは、便利に出来ていて、建築予定の敷地があるとすると、簡単に間取りを入れることが出来る。たとえば、
1.敷地の面積はどれくらいか(大きさ)
2.敷地が東西南北のどちらの道路に面しているのか(玄関の向き)
3.敷地と道路が接する長さ(間口)はどれくらいあるのか
この3つがあれば、間取りが決まる。
1.玄関の向き
2.建物の大きさ
この2つだけで、家が建ってしまう。
実際には、ここから色々の手続きがあるが、極端に言えば家が建つ!
プラン集は本当によく考えられていて、家族構成や今の時代に合った生活スタイルの統計を基に様々なプランが何百と表現されている。外観も和風や洋風など様々ある。当時はそのプランの数に圧倒され「これは凄いな」と素直に思った。
でも、私にはしっくりこなかった。
大切な何かが抜けてしまうような感じがしたからだ。
その1つに、お客様目線なのかなぁという疑問。
工務店営業の立場から考えると、早く契約が欲しいから?
依頼をいただいたら、すぐに間取りを持っていけるから、確かにスピード感は出る。このスピード感は大切で、待っている方からみたら早い方が嬉しい。喜んでいただける。
しかしながら、「プラン224があなたのプランです」と言うと、うすーく感じるのではないでしょうか。
弊社のベテラン設計士の立場のこと。
難しい試験を合格して、日々の生活の中でも四六時中、家事動線を考えていたり、食器を洗いながら、頭の中でテトリスのように間取りを考えている。建築が好きで、人を観察するのが得意で、時に心配性で、どうやったら満足してくれるかいつも考えている。
本当に良いプランというのは、施主と設計がこれからの未来について対話を深め、現場に何度も足を運び風景を身体で感じ、もっとじっくり考える必要があるのではないか。
東西南北の方位に加えて、敷地周辺の見晴らしの確認、一年を通しての風の向きはどうなのか。お隣さんの窓の位置、敷地の高低差、力強い太陽のエネルギーはどれくらい感じられるのか。
出来れば、白山から登る太陽も拝みたいし、お隣さんの紅葉も借景したい。
ちょっとした書斎や趣味室も欲しい。
数年後には子供たちは大きくなり、自分も両親も年をとる。
そして、日々の生活を気持ちよく過ごせることがとても大切。
プラン集は、良い意味で大きな間違いはない。そこそこ使い勝手もよい。平均化されている。それを超えたところに良いプランがあるように思う。敷地を俯瞰的に見て、私たちのちょっとした工夫で更に良くなる。今まで仕事を通じて経験させていただいた、私たちの設計ノウハウをどうぞ使っていただきたい。
平凡な日常の中にこそある、大切にしている想いを聞かせてください。
私たちは棟数を伸ばしたいのではなく、依頼主のお役に立ちたいと強く思っています。